緑内障とは
緑内障は、視神経が徐々にダメージを受けて視野が狭くなる進行性の病気で、特に初期段階ではほとんど自覚症状がありません。気づかないうちに視野が欠けてしまうため、視力が保たれていても視野の狭まりに気づきにくく、治療を受けないまま進行してしまうケースも多く見られます。このため、早期発見と治療が非常に重要です。特に40歳以上の方は緑内障のリスクが高まるため、見づらさのある方や近視の方は受診を強くお勧めします。
当院ではHFA 800シリーズという最新の視野検査装置を導入しています。この機器は従来の検査に比べて最大50%短時間でありながら正確に中心視野を測定できるため、患者様の検査負担が軽減されるのが特徴です。
早期に発見することで、点眼治療などで進行を抑えることが可能です。緑内障は、放置すると失明の原因にもなるため、健康な視野を保つためにもぜひ定期的な検査を受けましょう。
眼圧について
眼球は内部から圧力がかかることで丸い形状を保っており、この圧力が眼圧と呼ばれています。眼圧は眼球に満たされた房水の量によって変わります。余分な房水は隅角からフィルターである線維柱帯を通り、最後にシュレム管という出口から排出されます。
房水の量が少なく眼圧が低いと眼球が丸い形状を保てなくなって網膜に正常な像を結べなくなります。逆に房水の量が過剰で眼圧が高くなると視神経が圧迫されて障害し、視野の欠けなどの深刻な症状を起こします。
緑内障のほとんどは正常な眼圧で起こる正常眼圧緑内障ですが、正常眼圧緑内障の場合も眼圧を下げることが症状の進行防止には不可欠です。
緑内障の分類
正常眼圧緑内障
眼圧が正常範囲(20mmHg以下)で発症する緑内障です。患者数が最も多く、原発開放隅角緑内障では約90%がこの正常眼圧緑内障であるとされています。
正常眼圧ですが、進行を止めるためには眼圧を低く抑える治療が必要です。
原発開放隅角緑内障
排出される房水が通る線維柱帯というフィルターが詰まって流れが滞って発症します。進行がとてもゆっくりですので自覚症状に乏しく、気付いた時にはかなり進行しているケースが多くなっています。
原発閉塞隅角緑内障
房水が排出される際に最初に通る隅角が狭窄や閉塞を起こして眼圧が上昇し、発症します。進行が遅い慢性型、突然激しい急性緑内障発作を起こす急性型があります。
急性緑内障発作では、目の痛み、頭痛、吐き気などの激しい症状が現れます。早急に眼圧を下げないと視神経に大きな障害が残る可能性がありますので、早めに受診してください。
発達緑内障
房水の流れが先天的に未発達なことによって発症します。新生児や乳幼児が発症する早発型だけでなく、10~20代になってから発症する遅発型があります。早発型は急激な悪化を起こしやすい傾向があり、手術を検討する場合もあります。
続発緑内障
外傷、疾患や薬剤などによって眼圧が上がってしまって発症するタイプです。眼科疾患では角膜疾患やぶどう膜炎などの炎症、白内障、網膜剥離、全身疾患では糖尿病によって起こることがあります。また、ステロイド剤の影響で緑内障を発症することもあります。
緑内障の症状
突然激しい症状が現れる急性緑内障発作を起こすケースもありますが、多くはゆっくり進行していきます。ほとんどの場合、視野の欠けは最初、片目の中心から外れた部分に起こって徐々にそれが広がっていきます。かなり大きく視野が欠けてしまっても自覚症状がほとんどないこともよくあります。見えにくい、視力が落ちたと感じた時にはかなり進行してしまっているケースが多いため、早めの受診をお勧めします。
視野の欠けを治療で解消することはできませんが、早めに受診して適切な治療を続ければその時点での良好な見る機能を将来も保てます。自覚症状が現れる前に眼科検診を受けることが重要です。
急性緑内障発作について
急激に眼圧が上がって起こります。突然、激しい目の痛み・頭痛・吐き気が起こります。放置してしまうと失明する危険性がありますので、早急に眼科専門医を受診して眼圧を下げる処置が必要です。脳梗塞の症状と似ているため、まず脳神経科や内科を受診することも多いと思いますが、その際には必ず眼圧も調べてもらってください。
緑内障の検査
眼圧検査、眼底検査、視野検査などを行って診断します。健康診断で受ける眼科検査で異常を指摘された場合は、できるだけ早く眼科専門医を受診してくわしく調べてもらいましょう。
眼圧検査
眼圧の正常範囲は20mmHg以下ですが、この数値以内でも緑内障になることがあります。適切な治療や経過の確認には正確な数値を調べることが不可欠です。測定機器を直接表面に当てる検査と、測定機器で表面に空気を吹き付ける検査があります。
視力検査
一般的な視力検査です。緑内障による視力低下がないかどうかを調べます。
眼底検査
視神経は目の裏側である眼底にあって、眼底検査では視神経乳頭部のへこんだ陥凹の形状を観察できます。変形や大きさなどに異常がないかを確認し、障害の有無を調べます。
視野検査
視野の欠けがないかを調べる検査です。欠けがある場合、そのサイズなども確認できるため、進行状態の判断に役立ちます。
OCT (光干渉断層計)
眼球の裏側に広がっている網膜を3D解析できる検査です。断層として確認できるため、視神経の厚さを調べることができ、緑内障の正確な進行度を判断することができます。
隅角検査
房水の排出口である隅角のサイズや形状などに異常がないかを調べる検査です。緑内障のタイプを診断して適切な治療を行うために不可欠な検査です。
緑内障の治療
視野の欠けた部分を元に戻すことはできません。治療では視野の欠けがそれ以上進まないようにする、または進行を限りなくゆるやかにすることを目標に行われます。
正常眼圧緑内障の場合でも、眼圧を下げることで視神経へのダメージを減らすことができます。そのため、緑内障の治療では、基本的に眼圧を低くコントロールする治療が行われます。点眼薬を用いる治療が一般的で、緑内障のタイプなどによって房水の産生を抑制するもの、排出を促すものなどから最適な点眼薬を処方しています。
点眼薬では十分な効果が得られない場合には、房水排出の際にフィルターの役目を果たしている線維柱帯にレーザーを照射して排出を改善する治療や手術を行います。その場合は連携施設へご紹介いたします。
定期的に検査と治療で見る機能を守りましょう
緑内障は進行させてしまうと失明につながる疾患であり、日本人の中途失明原因で長く1位を占めています。そのため、早期発見と適切な治療を地道に続けていくことが重要になります。将来的に良好な見る機能を保っていくためにも、緑内障発症リスクが上昇しはじめる40歳を超えたら自覚症状がなくても眼科専門医で検診を受けることをおすすめします。
また、緑内障は治療で進行を止めることはできても、現状を維持できるだけですから「よくなった」と実感できる効果はありません。また早期発見された場合、治療を中止しても悪化して日常生活に支障を及ぼすまでには時間がかかりますので治療をついおろそかにしてしまうことがあります。ただし、治療をおろそかにして視野の欠けが広がってしまったらそれを取り戻すことはできません。将来のQOL(クオリティ・オブ・ライフ)を守るためにも、治療を生活の一部として習慣付け、地道に続けるようにしてください。当院ではできるだけ心身へのご負担なく治療を続けられるよう、きめ細かくサポートしております。